熱伝導シミュレーション 外径170mm 丸鋼片
● 計算条件
  加熱炉の形状、材質
● シミュレーションに使う方程式
  差分方程式の内容
  プログラムを組む場合の補足
  エクセルのワークシートで計算する場合の補足
● 計算結果
  エクセルのワークシート
 エクセル 3D等高線図
 回転行列 3D回転グラフ
● 計算条件
ー 加熱炉の形状、材質
 加熱炉の内面をどこまでシミュレーションするかですが、全部の形状、材質を図面通りにすることもできるし、天井と床は平行平板(もしくは円板)と仮定することもできます。
 上の炉の絵はエクセルの図形だけで作った単純なものですが、これでも全部をシミュレーションする場合には相当な手間がかかると思われます。
 ここでは、シミュレーションを単純にするために、炉の形状は無視して、丸鋼片の外周の温度が決まっている場合をシミュレートしてみたいと思います。
 
● シミュレーションに使う方程式
 外周温度が与えられる場合は、熱の伝わりの3要素、熱輻射、熱伝達、熱伝導のうち、熱伝導のみとなります。熱伝導の微分方程式は、特別な場合を除き解析的に解けないので、差分法をもちいて丸鋼片の内部温度の計算をします。(もちろん、差分法以外の数値計算法でもかまいません。)
 丸鋼片の内部温度計算なので、極座標を用いて計算してみたいと思います。極座標の差分法の方程式は、次の式となります。
ー 差分方程式の内容
 式の詳細は、理論 熱伝導を参照してください。円柱座標では、中心部が点になるので、中心部のほかの解析(ひずみなど)をしたい場合は、直交座標系のほうが適しているかもしれません。シミュレーションの目的にあった座標系を使ってください。
 Tが温度で、r、θが極座標での位置です。Tの右肩のnは、n回目、n+1がその次です。Tの右足のi, jは、極座標での順番になります。
 初期条件をn=1とすると、n=2が、凾 0.001 秒後の温度です。10秒後のn=10000が最終となります。 i,j は、1から分割数までです。
ー プログラムを組む場合の補足
 プログラムを組む場合は、VBAなどはi,jはゼロからでもエラーになりませんので、0から計算しても差し支えありません。
ー エクセルのワークシートで計算する場合の補足
 エクセルの表で計算する場合は、セルの縦と横にrとθをとり、あるセルに接している4セルの値で計算できます。エクセルの表で途中経過を保存する場合は、ほしい時刻で繰り返し計算を止めて、別表に書き出しておくといいです。
● 初期条件
 長い丸鋼片の中央部の昇熱を計算しますが、初期条件としては、下記とします。
  時間差分: 0.001 sec
  半径:85mm、分割数=20
  角度:0−2π、分割数=21
  初期丸鋼片温度: 300度K
  丸鋼片外周温度:1000度K
  炉庄温度    : 800度K
 極座標(r、θ)なので、外周温度は、r=85mm、炉庄温度は、外周部円周2分割分とします。
● 温度ミュレーション方法
 差分の式と初期条件をプログラムを組むか、エクセルのワークシートに展開して計算します。必要な時間分繰り返し計算をします。例では、凾=0.001秒としたので、10秒の計算では、1万回の計算が必要になります。
 計算結果だのみの出力でもいいですが、3秒後、5秒後など、途中経過を出力すると、例えば中心部での昇熱カーブが得られます。
 計算に使ったラップトップのスペックは、corei5 4コア RAM 16GBです。繰り返し回数は1万回でしたが、ほぼ瞬時に終わりました。
● 計算結果
ー エクセルワークシート
 10秒後の計算結果は下の表となりました。
ー エクセル 計算結果のグラフ表示
 座標データは2Dですが、温度を入れると3Dになるので、エクセルの3D等高線図を使いました。エクセルには、極座標用のいい3Dグラフが見つからなかったので、等高線図で結果を表示すると、次のようになります。
 外周(r=85mm)の中央あたりが凹んで見えますが、鋼片が炉床と接触しているとして温度を下げた部分です。
ー 回転行列 3Dグラフ
 3D回転で紹介した方法で、回転行列を利用してr、θ、tの3Dのデータを、R(x),R(y)、R(z)に変換して、そのうちのR(x)とR(z)のデータで散布図を描いたものです。(詳細は「3D回転」を参照してください。)
 R(x)軸で64度回転、R(z)軸でー43度したものです。
 回転行列で3Dデータを2Dに変換しているので、散布図の軸は非表示、温度計算結果のデータに軸のデータを追加して、軸もデータと一緒に回転させています。
 R(z)軸も若干手前に傾いているので、エクセルの縦軸の数字は正確ではありません。R(z)軸の傾斜分を補正して温度の数値を入れるのが正解ですが、イメージがわかればいいと思いましたので、散布図の縦軸をそのまま表示しています。
 丸鋼片が炉床と接触する部分は左側に来ています。
Author: T. Oda
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